※この物語はインナーチャイルドセッションを元にしたフィクションです。
高校の頃、不登校になった。
ストレスから過食するようになった。
食べることしか、ストレスの発散方法がない。
今は仕事をせず、実家に暮らしている。
就職も、チャレンジしたけどダメだった。
何をするにも、日常の義務として嫌々やっている。
自分が何をしたいのか、何を好きなのか
何をしたら楽しめる人生になるのか、まったくわからない。
古い木の扉を開けると、暗い部屋があった。
奥にはシーツが一枚かかっただけの粗末なベッド
部屋というより牢屋みたい。
小さな窓から日がさしてくるけど、決して居心地は良くない。
ハリー・ポッターに出てくる屋敷しもべ妖精っぽい、小さな女の子がいる。
ぼろぼろの布きれ一枚を羽織り、髪は洗ってないような汚れかたをしている。
ギョロリとした大きな目が、じっとこっちを見ていた。
そして、こう言った。
屋敷に閉じ込められて、しもべとして働いている。
家から出ることができない。
外に出たいけど、屋敷のことしか知らない。
外で何もできないから、出ることを諦めてる。
あなたが生まれるずっと前から、屋敷しもべはあなたの中にいる。
長い間、家の中でこき使われて、家事しかできない。
家しか住む場所がない。
「一緒に行くから、外に遊びに行こう」
屋敷しもべは体が醜いから、外に出たくない。
もし遊んで動いたりしたら、周りから「気持ち悪い」って思われる。
極端に大きな目、手足は木の枝のように細いし、ぼろぼろだし。
そんな姿を他の人に見せたくないし、怖い。
「私たち以外、誰もいないところに行くから大丈夫」
野原の先にある小川に、屋敷しもべを連れて行った。
怯えているから、しっかり手を繋いだ。
二人で小川で遊んだ。
岩から跳び込んだり、ウォータースライダーで滑ったり。
高校の制服が二人分、小川のほとりにあった。
びしょ濡れだったから、それに着替えた。
すると屋敷しもべは、高校の頃の自分に変わった。
ここは、生まれかわりの小川。
黄色い光のさす明るい野原に、ゴロンと寝転んだ。
光りに包まれながら、二人で空を見上げる。
満たされた気分が広がっていく。
高校生の自分はこう言った。
本当は、勉強以外のこと、やりたかった。
普通に友だちと遊びに行ったり、遅くまでテレビ観たり
好きなマンガ読んだり、いっぱいインターネット見たり。
でも高校に入るとき、「好きなマンガ、やめる」って決めた。
「マンガとかネットとか、楽しみたかったんだ…マンガ、読みたい?」
読みたい。
二人で、イメージの中でネットカフェに行った。
高校生の自分は楽しんでる。
でも私はずっとマンガをやめていたから、どれを読んだらいいのかわからない。
とりあえず、お茶を飲んで座っていた。
「これからどうしようかな…」
泊まりたい。
「じゃぁ、二人でネカフェに泊まろう」
そして、二人でネカフェに一泊した。
十分遊んだ高校生の自分、笑ってる。
屋敷しもべの部屋に戻ると、部屋がすっかり変わっていた。
今の自分の部屋だった。
高校生の自分の居心地が良くなるように、大きいテレビを置いて、ゲーム機を繋いだ。
これで、好きなゲームができる。
二人でキャッキャ言いながらゲームした。
チョコレートとか、甘いお菓子もいっぱい食べて、紅茶飲んで。
楽しい。
何時までに終わらせなきゃないとか、制限を付けられたくない。
一晩中、お菓子を食べながらゲームするのが夢だった。
中学校のとき、太ってて
高校に入って、食べて吐くようになったら
みんなに「痩せてスタイルが良くなったね」って言われた。
それが嬉しくて、高校からはお菓子を制限してた。
十分食べたし、十分遊んだ。
幸せ。
高校に入ってから、痩せることしか考えてなくて
「いかに痩せて褒められるか」ってことばかり考えていた。
「楽しむ」ってこと、全部無視して、容姿にとりつかれていた。
マンガ読んだり、ゲームしたほうが楽しかったな。
マンガ、ゲーム、お菓子。
好きなものを「好き」って言って、素直に楽しんでいる自分が、一番可愛い。
「可愛い」って、言ってあげた。
高校生の自分が「遊んでくれたお礼」って、私に香水をプレゼントしてくれた。
綺麗な香水瓶が、手のひらの上に乗っていた。
香水はね、服と違って誰でも身に付けられる。
服に体型を合わせるため無理に痩せるとか
化粧だって元の顔を隠すことになるけど、そうじゃない。
体型とか関係なく、見た目そのままにおしゃれすることを知ってほしい。
女の子らしい可愛い香り、楽しんだほうがいいんじゃない?
そう言っていた。
無理して外に出なくていいから、家の中で楽しめればいいよ。
「外に出ないといけない」と思い込んでいた自分と
「家の中で楽しんで」という自分。
どちらの自分を信じるか。
その答えはもう、自分の中にちゃんとあった。