人間とサテュロス、そして別解
- カトウ
- 4月10日
- 読了時間: 3分
更新日:4 日前

『人とサテュロス』
イソップ寓話※より うろ覚えで
昔、森に住むある男が、サテュロスと友だちになりました。
サテュロスは半人半獣、上半身が人間で下半身がヤギの姿の精霊です。
やがて冬がきて寒い中、男は両手にふーふーと息を吹きかけました。
それを見たサテュロスは、男にたずねました。
「どうしてそうするの」
男は「手が冷たいから息で温めているんだ」と言いました。
その後、男の家で二人は食事をします。
熱い料理に、男はふーふーと息を吹きかけました。
「どうしてそうするの」
またサテュロスは男にたずねました。
男は「とても熱いから息でさましているんだ」と答えました。
サテュロスは愕然としました。
「同じ口から熱も冷気も出すなんて、そんな人とは友だちになれない、友だちをやめるよ」
※イソップ寓話はパブリックドメインです。
「人間の持つ言語とは、難しいもんだな…」
そうぼんやりと思いながら瞑想をし始め
そしてふわっと思い浮かんだのがこの『人とサテュロス』
若い頃、寓話の短編集にはまった時期があり
たくさんの短編寓話の中でも大好きだったお話です。
「得体のしれない人とお友だちになるのはやめましょう」
という教訓が一般的らしいのですが、私の解釈はちょっと違っていました。
一人ひとりの解釈があっていいのがこの世界なんじゃないかなと
別解好きな私の勝手な話を、これから展開していきます。
人間は、言語を持ったからすれ違う生きもの。
地球上で「同種なのにすれ違い」のようなことを起こすのは多分、人間だけです。
サテュロスは自然の精霊ですが、上半身は人間の姿だからなのか
物語の中では言語でコミュニケーションをはかれる存在でした。
もし、もしもです。
男が、人間の特徴や習性を知らないサテュロスを理解し
「温める息」と「冷ます息」の違いを言葉でうまく説明できたら
この関係、ちょっと違ったのかもしれません。
そして、サテュロスが
「え?さっき温めてるって言ったじゃん?なんで今度は冷ませるわけ?」
と、疑問に感じたことを素直に言葉にできたなら、やはり違ったのかもしれません。
言葉が足りなかった。
お互いに話し合いの仕方を知らなかった。
相手を決めつけて諦めちゃった。
それだけだったのでは。
それが私の解釈でした。
そもそも人間と精霊なので、持てる波長の違いはあるのかもしれません。
だけど精霊という、目に見えない存在とコンタクトを取る能力が男にあった可能性もあるわけで
もしそうなら、この二人の波長は限りなく近かったはずです。
人の言葉というツールがなければ、友情は長続きしたのかもしれません。
全く波長の合わない存在とコミュニケーションを取るのは、とても疲れます。
それはしなくていいことだと思います。
それで「どん引き」と思ったら距離を取っていいし、我慢もいりません。
『人とサテュロス』 私の別解は
もし、相手と少しでも相性が良いと思うなら
相手のせいにばかりしないで、自分の言動も振り返ったうえちゃんと話し合え。
それから進退は決めたらいい。
人の言語とはそもそも難しいものだから、一端だけで決めつけないほうがいい。
あっ、言葉がちょっとキツいな…
と、言葉って本当に難しくて、私も頑張って覚えている最中です。
この物語は紀元前6世紀、大体2500年くらい前、それほど古いものです。
人間が授かったツール『言葉』は今の時代、良くも悪くも当時に比べたらアップデートされているはずです。
「すれ違った」
その感覚は、大事なメッセージ。
なにかまだ、やれることが残っているのかもしれません。
言葉の使い方、諦めずに模索していこうと改めて思った4月の始めでした。