サブパーソナリティの言い分を聞くと
一見ブラックに思えることが多いのですが
だけどよくよく聞いたら
実は本人のため「良かれ」とやっていることが殆ど。
悪気もないし、一本気。
実際のセッションから、脚色してお届けします。
※以下、この物語は、実際のセッションを元にしたフィクションです。
・おばあさん…サブパーソナリティ
・男の子…インナーチャイルド
「人にはいろんな考えかたがある」
ということを、急に認められなくなった。
「みんなと自分は違う」
「全部自分が間違っている」
家族も仲間もいるのに
疎外感に苛まれる日々が苦しい。
どうしても、自力で自分を助けられない。
昔の人が幽閉されるような場所、岩牢にいる。
窓も灯りもなく、暗い中
痩せたおばあさんと男の子が、手をつないで立っている。
二人とも、こっちに背を向け
どういうわけか子どもは裸、何も着ていない。
子どもはこっちを気にしているけれど
おばあさんは子どもに
「後ろを向くな」「気にするな」と言った。
「その子と話をさせてください」
そう伝えると、おばあさんはこう言った。
この子のことは
一生懸命、自分なりに育ててきた。
私は、この子の幸せを願っている。
だけど私は
この子を幸せにすることができなかった。
私がこの子を幸せにできなかったのに
あなたは
この子を幸せにすることができるのか?
世界で何が起こっても、この子には
「人と話をするな」「見るな」「聞くな」
と言い聞かせてきた。
それは、この子を守るため。
あなたが来た今
この子は私から離れたいと思っている。
だけど手を離せば、この子は迷ってしまう。
だから私は、この子を離したくない。
私はこの子の何代も前
前世からガイドとしている。
遡れば、1000年以上も前からのこと
この子が生まれ変わるたび
私はこの子と共にいた。
この子はずっと私から離れず
私の言いつけを守ってきた。
「手を離せば不幸になる」
そう教えてきたから。
でも前に、今日と同じように誰かが来て
この子にわざわざ話しかけた。
その人は「手を離せ」と言った。
そのとき、私は手を握って離さなかった。
だけどそれを聞いて、この子は迷っていた。
「自分は話しかけられる存在」
この子はそれを知ってしまった。
誰も来なければ、知らずに済んだものを。
それからというもの、この子は
話しかけてくれる人を待つようになり
「手を離したい」と思い始めた。
そして今日、あなたが来た。
来るということは、わかっていた。
この子が傷つくのを見たくなくて
その一心で、私は守り続けてきた。
遡れば、遠い昔から何回も、何回も
この子は傷ついてきた。
長い間、誰にも守られてこなかった子。
私といるようになって
この子は傷つかなくなった。
私が危険な目に遭わせないようしてきたから。
だから、ここから外に出ることはない。
外に出ないから、服を着る必要もない。
この子は”服を着る”ということを知らない。
何かがおかしい気がした。
本当に、この子に何も起こらなかったの?
本当に?
危険なことは、確かにあった。
だけど
「あれは幻」とこの子に教え、騙してきた。
この子は大人にならないまま、何回も死んだ。
暴力を受けたり、騙されたり
食べ物を与えられなかったり
とても言えないようなことをされたり
人間は、本当にひどいことをする。
だけど、この子は純粋だったから
何があっても「災い」と思わないまま死んだ。
どんなに恐ろしい現実も
この子にとっては「災い」ではない。
なぜなら私が「幻だ」と言ったことを
この子はずっと信じ続けたから。
長い間、この子の手を引き、逃げ続け
子どもが興味を持ちそうなことからは
全て遠ざけてきた。
それで、二人とも幸せなの?
私の幸せは、この子の幸せ。
だけど、話しかけられるようになってから
「本当にこの子は幸せなのか?」
「この子の幸せは別なところにあるのかも」
そう思うようになった。
だからといって、私は怖くて手を離せない。
この子が成長しないまま、それでも「幸せ」って言えるの?
知っています。
わかっていて
成長しないよう手をつないでいます。
成長したら
この子は私から離れて行ってしまうでしょう?
この子に執着するのは
一緒に幸せになりたいからです。
だけど今はもう、幸せではありません。
この子がもう
「手を離したい」と思っているから。
外の世界は昔と違ってもう安全です。
一緒に外に出てみませんか?
もしこの子が幸せになるのならば
連れて行ってください。
私はここから見ています。
ただ、この子が「戻りたい」と言ったときは
連れてきてください。
「連れて行って」と聞いて
この子は嬉しそうに笑っています。
だから、どうぞ連れて行ってください。
男の子は、走ってきて私に強く抱きついた。
「待ってた」そう言って。
この子には、前のセッションのときに会った。
そのとき、この子は話をしてくれなかったけど
「また来る」と約束したことを、ちゃんと覚えてくれていた。
手をつないで外に連れて行くと、眩しそうにしている。
裸のまんまじゃな、と服を着せようとしたけど、男の子は拒んだ。
服を着る習慣がないんだった。
だから、そのまま裸でいていいことにした。
この子が初めて見る、明るい場所。
服もいらないし、何を欲しがるでもない。
ただここにいて、空気を吸うだけでも新鮮みたい。
丈の長い草が風に揺れ、陽の光で金色に輝いている。
その中を、二人で一緒に走り回った。
その野原には、天国に続く階段があった。
男の子は途中までのぼって、上に行けるのを確かめて戻ってきた。
いずれは天国に行くと、この子はわかっている。
男の子は「おばあさんのところに戻らない」と言った。
それを伝えに、おばあさんのところに自分だけ戻った。
「上で元気に、幸せそうに走っていますから、どうかあの子を私に委ねてください。」
そう言ったらおばあさんは
頼みます。見ています。
監視じゃなくて、見守っています。
あなたの苦しみは
あの子が小さくしていってくれます。
だから、あの子といつでも共にいてください。
あなたがあの子を救ったわけではなくて
私も、あの子を手放したというわけでもなくて。
あの子が、あなたを救ってくれるのです。
あの子は、あなた。
それを忘れないで。
【セッション後/Aさんより】
男の子の目がとても綺麗で、あの目で感じることを、これから一緒に感じていきたいと思いました。
「自分の心の目が曇ったり閉じたりしてしまうと思っていたけど、違った」と思えたのが大きかったです。
自分を守り信じている存在からの「見てはいけない」「触れてはいけない」という言葉は”恐れ”で、それは呪縛となり、妄想や孤独に向かわせていました。
後から思ったのは、男の子に通じた言葉は”楽”でした。
「手を放して”楽”になろう」
「これからは”楽しい”ことがいっぱいあるよ」
”楽”とは、心身に苦痛がなく安らかで、簡単なこと。
”楽しい”とは、満ち足りていて、愉快なこと。
今は、男の子と共にある感覚を持ちながら、”楽”に暮らしています。