※このお話は、実際のハイアーセルフセッションを元にしたフィクションです
帰省中、両親と衝突した
それ以来、世界が白黒に思える
私の知ってる世界は、カラフルで美しい
この白黒の世界は、私の知ってる世界じゃない
気持ちを切り替えようと奮い立たせるけれど
つきまとう虚無感から逃れらない
面白くないとか、そういうレベルの話ではない
生きている意味さえわからなくなった
ただ、親子喧嘩しただけなのに
私は一体、どうしてしまったんだろう
電車の窓から、夕焼け空を眺めている
若い、疲れ顔の自分と
横には、小さな自分が座っている
他に乗客はいない
遠くの山や木々が黒く浮き上がって見え
その向こう側は、闇になる直前の色
深いオレンジと黒のコントラスト
切り絵のような美しい光景
駅のある場所は、酷い焼け野原だ
まるで空爆でもあったかのように
木も草も、何も残っていない
「やっとここを抜け出せる」という安堵感
何があったか、わからないけど
「楽しみだね」
小さな自分は、笑顔で私にそう言った
車掌さんがやってきて、こう言った
「とても綺麗な夕焼け空です
これが、いつもあなたが見ている、美しい景色の中の一つ
そして、この土地は
何者かにより踏み荒らされ、毒を撒かれ
このように焼け野原になってしまいました
これから、新しい駅に向かいます」
顔の見えない車掌さんは多分
ハイアーセルフの言葉を私に伝えてくれている
行き先も知らないまま
電車がゆっくり走り始めた
走るにつれ、窓に昔の光景が次々と映し出される
まるで走馬灯のよう
父親が荒れて、私を袋叩きにしている
周りから評判のいい母親は、家に入れば毒を撒き散らす
親の無関心、過干渉、支離滅裂さに戸惑う自分
なんか、どれも惨めな場面ばかり
数えきれないほど見えてくる
「みんなに笑ってほしい」
私は小さい頃から真っ直ぐそう思っていて
大人になった今でもそれは変わらずあった
でもこの前、両親と喧嘩したとき
「この人たちとは、わかり合えない」
はっきりそう思った
両親は、今も昔も
人の話を聞く気も、意思を汲む気もない
「毒親」
私にとって両親は、それ以外の何者でもない
そう、気がついてしまった
本当は、うっすらわかっていた
だけどずっと「毒親」だと認めたくなかった
あの焼け野原は、こういうことなんだ
「毒をくらい続け、結果、心は焼け野原」
自ら戦地に飛び込んでいたつもりもなかったけれど
いまだに、実家に入った途端
私の守るべき心は焼け焦げてしまう
確かにそう
これが、共依存というあれか
自覚なく、やってしまっていたこと
これからは丸め込まれないよう
うっかり支配されないよう
ちゃんと、小さな心を守れるようにしないと
朝が来て、空が明るくなり始めた
「でも、どうして世界が白黒だったの?」
小さい自分は知りたいみたい
「白黒の世界が現実なんですよ」
車掌さんはそう言い、切符を切った
親の生きてきた世界も、自分の生きてきた世界も
実は、ずっとモノクロ
味気なく、楽しみもなく
苦しみばかりの地獄のような世界
暗く、悲しいニュースが蔓延し
せちがらく、苦労も絶えず
恐怖、危険、一歩間違えば闇に落ちる
自分はこの白黒の世界を
もっと違った色でも見ていた
だから、何かあったら落ち込むけれど
ずっと引きずることはなかった
食べたり、遊んだり、眠ったりすれば
いずれ悲しいニュースはだたの事象になる
恐怖や不安は笑い話に
危険や見知らぬものは冒険に
苦労も間違いも、苦悩さえも貴重な経験
自分はそういうふうにものごとを見る
両親は、そういうふうに見ることができない
見ている世界が違うから、わかり合えはしない
親の目には、白黒しか見えず
私は、色とりどりの世界ばかり見ている
エンドクレジットみたいに、窓に文字が流れてくる
「親も子も、色を歪めて見る魔法がかかっている
そう見せられていることに気づかないよう、巧妙に
魔法は偏ったものの見かたと、それしか知らない石頭を作り出す
そして、自我はぶつかり合い、いずれ人間関係は崩壊する
モノクロもカラーも、見かたを変えればどっちも現実」
電車が停まった
着いたところは自然がいっぱいの
誰にも踏み荒らされていない土地
モノクロとカラーが交差する、美しい場所
ここで、自分の幸せを生き直す
小さな自分と手を繋いで
クライアント・Yさんより
セッション後の感想
今回、ちょっとした口論から「死」を意識するところまでいってしまい、自分に何が起こったのか全く理解できずどうしようもなく苦しいと思いながら日々暮らしていました。
長年、親子で狂った茶番劇を繰り広げてきて、その度心はダメージを受けていました。
私は「親がいつか笑ってくれる」という幻想を抱き、それは、親が私に対して何らかの幻想を抱いていたのと同じと気がつき、結局のところ「似た者親子だったんだ」と拍子抜けした部分もありました。
「両親が毒親という事実」が、自分にとっての白黒の世界。
それはおそらく、自分の中では最も絶望的で、この世の終わりに匹敵するものだったんだと思います。
大袈裟なようですが、そう思い込んでいました。
どう考えても、筋金入りの毒親育ちなことに変わりはありません。
白黒の世界から目を背けていれば、マインドコントロールに気付きようがありませんでした。
「白黒の世界も現実」と認めてはじめて呪縛が解けた気がしました。
親との関係に軌道修正をかけるタイミングだと思いますが、できることなら嫌わず大事にしたい存在でもあります。
もう茶番劇の舞台に上がるのはこりごりなので、お互いの違いを理解したうえ、接しかたに気をつけたいと思いました。