※この物語は、サブパーソナリティセッションを元にしたフィクションです
「人がキライ」
彼女は、このキーワードに関係する者と話をしに来た。
目の前には、オレンジを輪切りにしたような丸い扉。
扉を開けると、壁全体にフルーツが埋め込まれている円形の部屋。
独特なテクスチャのガラスの床から、優しい光が差し、部屋を照らす。
部屋の中には雪だるま
そして雪だるまは、「椅子に腰かけて」と伝えてきた。
マシュマロの椅子が現れ、それに座って彼女は雪だるまの言葉を感じる。
本当は、もう一人ここにいた。
今日は、それと話をするために来てもらったんだけど、逃げちゃった。
隠れるのが上手なんだ。
人がキライだから、話したがってるけど、姿は現したくないんじゃないかな。
ラジカセがあるから、これで話してみて。
ラジカセのボタンを押すと、スピーカーから女の子の声が聞こえてきた。
人がキライなの!!
大っっっキライ!!
世の中全部の人がキライ!!
---どうして?
おっくうだから!!
イミがわからないし、うっとうしい!!
一人でいたい。
誰にも干渉されず自由でいたいし、縛られたくない。
人っていう存在そのものが、私を縛るでしょう?
だから、「なんで人間なんかになっちゃったのかな」って思ってる。
私、動物になりたかったの。
飼いネコとかじゃなく、野生の動物。
だけど、その願いが通らなくて、人間になってしまった。
ロシアの山奥とか、雪国のオオカミに生まれたかった。
山は広いから、駈け抜けて楽しいの。
人が入らない山なんか、誰にもおびやかされないから、私にとっては天国。
熊に気をつけて、あとは崖から落っこちないようにすればいいだけ。
動物は、仲間割れはするけど、人間みたいに執着を巻きつけられはしない。
地球上で、執着するのは人間くらいでしょ?
人間は、勝手に執着を巻きつけておいて、後から「食い殺したい」って思ってるサイテーの種。
コイツが死んで、私の番が来る、って思ってた。
で、コイツの中が軽くなって、中に余裕ができたから
やっと死んだんだー!!
解き放たれたー!!
って、、、出てきたら、、、
あれ???
コイツ、死んでないじゃん???
やっと自由になれるって思ったのに、、、
生きてんじゃん?!?!?!
コイツが生きてたら、出てくるはずじゃなかったのに!!
なんで???
ありえない!!!
なくなりすぎなのよ!!
こんなに軽くなるのって、死んだときくらいじゃん!!
意外すぎて、拍子抜けもいいところだよ!!
重さを背負って生きるのが人間でしょ??
それなのに、なんでこんなに軽いの??
生きてて、それでいて人の世に縛られてんじゃん!!
はぁぁ~~、、、
私の自由は、一体いつ来るの???
だからといって、また沈んだら、どれだけ待たなきゃならないのか。
それを思えば浮いていたい。
でも、浮けば浮いたで、コイツと喧嘩ばっかだし。
困ってる。そう、私、困ってるのよ。
自分のことだけしたいのに、なんで、コイツには人が寄って来る?
家族、友だち、いろんな人が尋常じゃないくらい寄って来る。
人に必要とされることはいいけど、私から見たらみんな、ゾンビにしか見えない。
他人の「人と繋がりたい」って糸が
コイツにすっごい巻きついてんの、繭みたい。
巻きつき方が、本っっ当にひどい。
ナニコレ?!
もうビックリだよ。
想定外も想定外。
「コイツ」の体に繭状に巻きついた糸は、厚さにして6センチほど。
他人からの執着でぐるぐる巻きになった体は、身動きがとれない状態だった。
コイツがもう少し、人をキライになれればいい。
半分くらいになれば、私の居場所も確保される。
このままだと、他のヤツらに私は食い殺されてしまう。
せめて、糸を今の半分くらいに切ってもらわないと苦しい。
---糸を切りたい。
「コイツ」がそう言った。
やっと意見が一致した!
ああ、やっと切れるのね!!
糸を切ると決まったものの、「コイツ」は手も足もまったく動かせない。
切るために協力を呼びかけると、女の子がようやく姿を現した。
10代の、フレッシュさのある、中性的な女の子だった。
女の子は、繭状のぶ厚い覆いを、大きなハサミを使って切開し始めた。
ため息混じりに、悪態をつきながら。
これが、、、救いに、、、なればいいんだけどーーー、、、
はーぁぁぁ、、、
ダールーいーーー
なーんなのこの糸ーーー
ぶ厚いーーー
ほーんとヤーダーーー
幸せ感じて、こうやって身動き取れなくなってるって、なーんで、わかんないかねーーー
ムーカーつーくーーー
コイツ、人がどういうふうに望んでいるかってのが読めるし、わかって動けるから、人の執着が巻きつくんだよ。
人の行為のウラには、執着がある。
それが存在することを、コイツは知らなかったんだよ。
女の子の頑張りの末、繭状の覆いに縦真っ二つに切れ目が入った。
そして体を揺さぶると、殆どの糸は落ちていった。
でも、おなかのところに数本、残った糸がある。
それは、どうしても切ることの難しい、身近な人たちの糸。
残った糸の先に風船をつけ、「コイツ」は女の子に約束した。
---その人を捨ててもいいと思ったら、この風船を空に飛ばす。
うん、それでいいと思う。
もうこれ以上、人と関わらないで。
これからは、人が来たら私が教える。
教えなきゃ私、居心地悪いもの。
喧嘩ばっかりだったけど、これからもよろしく。
挨拶を交わし、フルーツがいっぱいの部屋を後にして
「コイツ」と女の子は、いつもの日常に戻って行った。
END
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今回、掲載のご協力を頂いたクライアントさんは、計12回のセッションを受けています。
ヒプノは、やればやるほど心が軽くなるのは、確かにそうなんですが
サブパーソナリティが、間違って死亡判定してしまうほど、心の断捨離が進んでいたという…
私もびっくりのセッションでした( ゚д゚ )
心の重さが気になる方は、ぜひご相談下さいませ!!