※ この物語はサブパーソナリティセッションを元にしたフィクションです。
40代男性 マサユキさん(仮名)
「やってもムダだ、諦めろ」
「今までお前の信じてきたもの、全部ムダ」
ふとしたときに頭に浮かぶ言葉。
間もなく大晦日、年の瀬だっていうのに、嫌悪感しかない。
石の重そうな扉を開けると、薄暗い部屋に窓が一つ。
窓からは星空が見える。
そこには、シワシワ顔のオレがいた。
怖ろしく老けている。
老けたマサユキの顔だけが見える。
胴体と手足は、あるのかないのか。
老け顔には、「オレ2nd」、そう名付けた。
オレ2nd(・,_ゝ・)
去年の11月
窓に映った自分の顔を見て
「もう一人のオレがいる」って気付いただろ?
やっと認めたのな、オレの存在を。
でも、なんであのとき来なかった?
お前の今はね、オレ。
この顔、見てみろよ。
これが、お前の思ってるお前の顔か?
今のお前の顔、これだよ?
あのとき、「お前の顔、こうなるぞ」って教えようとした。
頑張り過ぎて、意識あちこちに散らして
エネルギー出し過ぎて
ぶつけて「返ってこない」って怒って、当たり散らして
そうかと思えば、見て見ぬ振りしたり
「ここを過ぎればなんとかなる」って思ったり。
頑張ってもムダ。
そんなことやってもムダなんだから、諦めろよ。
向かってる方向が違うんだから、いい加減に諦めろ。
信じてきたもの、捨てろ。
でも、諦めねぇんだよ、コイツ…
バカみたいに意地張って、怒って、エネルギー使ってる。
もうね、ダメだねコイツは。
そうしてるうちにいつの間にか、お前の顔、変わっただろう?
コイツ、壊れなきゃわかんねぇ。
もう半分壊れてるけど。
ハイアーが一緒に歩いてたんだけど、コイツ、バックしてった。
道から外れたわけじゃないけど、戻っちゃった。
ハイアー、そのとき意図的に呼び止めなかった。
ハイアー、コイツ置いて先に行っちゃった。
コイツ、戻ったのわかってない。
ハイアーも「バカじゃねぇかな」って呆れてる。
意地張らないで、我慢しないで、泣きたいときに泣けばいいのに。
「意思表示」と「怒る」は違うんだよ。
お前は意思表示しないで、ただただ怒ってる。
ケンカしたっていいから、自分を出してちゃんと表現しろよ。
せわしなく動くんじゃなくて、「ちゃんと喋って行動せぇ」ってこと。
自分で自分を騙してるからね。
そういうとこ、ズルい。
時がくるのを待って、行動しないうちに過ぎて、後から後悔して
それで意固地になる。
まずね、何をやってもいいけど、人の意見を聞け。
聞くだけじゃなく、ちゃんと噛み砕け。
噛み砕いて、理解できるよう考えろ。
何でその人がそう言っているのか
その人がどうしてその言葉を投げかけているのかを考えろ。
話を聞いて「ハイハイ、オレにはかんけーねぇ」じゃなくてさ。
反発するのは後からでもできるから、まずはその通りにやってみろ。
コイツね、鏡を見たがらない。
自分を見るのが嫌なの。
嘘つきだから。
嘘が自分にバレるから。
コイツは誤魔化し屋。
小学校の頃は純粋だったけどね。
中学校のときに「生きてくには誤魔化さなきゃならない」って思った。
それから誤魔化して生きている。
そうして、やりたくないことばっかりやってきた。
体操、やりたくなかった。
それなのに、「オレは国体に行った」って、言うでしょ?
やりたくなかったのにね。
わけわかんないままここまで生きて、今の仕事だってやりたくないし
ずーっと「辞めたい」って思ってる。
何十年と嫌な仕事やってたら、そりゃ体調崩すよね。
だから、朝、仕事に行く前に鏡で自分の姿を見るのが嫌なんだよ。
そうやって、仕事に行きたくない自分を誤魔化してる。
ただ、見とけよ?
これから鏡を見るたびに、オレは出てくるからな?
ちゃんと見ろよ?
「自分の顔がおかしい」って、目ぇ覚ませよ?
「鉄道模型、諦めろ」とも言ったけど
そのココロは
たくさん誤魔化しながら生きてるから
「模型が好きじゃなくなったんじゃないか」って思っちゃってて
何が誤魔化しで、何が誤魔化しじゃないのか、わかんなくなってんの。
一回やめれば、本当の自分な好きなものがわかる。
模型は好き過ぎて、実はめくらになってるだけ。
バカじゃねぇの?
気付けって。
一人で生きてる気になるなよ?
優しく言えば、すぐ忘れる。
ダメだコイツは。
キツイ言葉が今は必要。
ハイアーが待ってるぞ。
ちゃんと前に歩け。
オレは鏡で毎日会うからな。
そう言われて、ショックだった。
やってきたつもりだったけど、やれてなかったんだ。
でも、そうだったのか。
確かに、誤魔化して生きてきた。
気付いていながら見て見ぬ振りしてたことを、はっきり喋ってくれた。
次の日の朝、鏡を見たとき
オレ2ndは
「まだだな。(・,_ゝ・)」
と言った。
なんだかんだで、オレを相手にしてくれてる。
一人じゃないんだな。
意外なキャラだったけど、ありがたい存在。
明日もまた、よろしくね。