※この物語はサブパーソナリティセッションを元にしたフィクションです。
4月から新入社員で働き始め、3ヶ月ほど。
初めは順調に思えたけど、最近、他の社員から冷やかされるようになった。
そいつは自分のSNSを監視して、その内容をわざわざ話すし、噂も広めてる。
数人でコソコソ話しては、こっちを見て笑ったり。
監視されていると知ったとき、青ざめた。
ハンドルネームだし、顔写真も載せていない。
なのに特定された。
そいつはどうして、わざわざ俺のアカウントを探したりしたのか。
誰がどこで見ているのか。
いつ何を言われているのか。
人の目が怖い。
それが被害妄想だってわかってる。
でも、会社にいるのがしんどい。
上下反対についたドアを開けると、地下水路のような通路があった。
その行き止まりに、何かの気配を感じる。
ガリガリに痩せた人間だ。
髪、やたら少ない。
服も着ていないし、歳も性別もわからない。
これ、近寄っちゃいけないような気がする。
あかん雰囲気。
すぐそばに階段があるけど、壊れている。
ここから上にあがることはできなそう。
壁には、スプレーアートの連なる山の絵があって
一つ一つの山のてっぺんには、何故か目が描かれていた。
話しかけると、ガリガリ君はこう言った。
監視されたから、不可抗力的に辛くなっている。
わりと、どうしようもないに近い。
辛いことがあったとき、山の頂上に目ができた。
これは、人の目。
上、上がりたくない。
人がたくさんいて、何があるかわからないから。
何もないかもしれないけど、何かあるかもしれないし
誰かが自分に何かしてこないとも限らない。
山の頂上の目、いくつかは自分を見ている。
違うほうを向いている目もあるけど。
目が気になる。
見られると、やだ。
ガリガリ君は、自分の引きこもりの要素みたいだ。
壁の目、見られてイヤなら、絵なんだから塗りつぶしたらいいのに。
でも、コイツの居場所には何もない。
もちろん画材も。
「俺がスプレーで塗りつぶしてやるよ。」
そう言って、緑色のスプレーで、目だけを残らず塗りつぶした。
目が消えたら、ガリガリ君はホッとしたような顔をして、こう言った。
お腹すいた。
聞いたら相当長い間、この何もない通路に、何も食べずにいたらしい。
ガリガリに痩せてるから、肉とか、カロリーの高そうな食べ物をあげた。
お腹いっぱい。
もう人の目、気にならない。
ガリガリ君にさよならして外に出ると、今度は人型の大きなウサギが立っていた。
ウサギはこう言った。
まだ気持ちの整理がついていない。
明日、丸一日、頭を空っぽにして何も考えないで過ごして。
ちょっときっかけがあれば、またイヤなこと思い出す。
そして考え過ぎる。
考え過ぎるのは、癖。
んで、アドバイスされても、それを整理するのにも時間がかかる。
そういうとこ、アタマ良くないから。
明日一日ちゃんと休んで。
その後暫く仕事に行ってみて、「ダメだ」って思ったら辞めればいい。
でも、仕事は合ってる。
俺としても、仕事辞めたくないし。
仕事、見てて楽しそうだもん。
俺の役割は、お前が困ったときに話しを聞くこと。
お前、手がかかる。
今ね、お前の面倒見るだけで精一杯。
俺もマジ余裕ない。
いろいろ手伝いたいけど、他に手が回らない。
お前、頑張れ。
困ったら、また話聞くから。
ウサギはそう言い、去っていった。
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今回やってきてくれたのは、サブパーソナリティ二人。
一人は引きこもりの人格、もう一人はガイド役の人格でした。
複数の副人格の集合体、それが一人の人間。
自分の中の意外な自分だったり
それとも、「あ~、自分、そういうとこあるある」っていう自分。
自分の人格の一部を知ると、不思議と納得できるところもあったりして。
副人格は、本当は本人に手伝いたいし、言い分もあるし、アドバイスもしたかったり。
何だかちょっと困ったな、ってときは、サブパーソナリティセッション、面白いですよ~^_^