※この物語はサブパーソナリティセッションを元にしたフィクションです。
ある夜、眠ろうと布団に入ったら、急に悲しくなった。
しばらく泣いて、その後眠った。
次の朝、目が覚めたら急に「怖い」と思った。
仕事に行かなければならないのに、怖くてどうしようもなかった。
無理に支度をしていたら、過呼吸を起こして動けなくなった。
自分が何が悲しくて泣いたのか
自分が何を怖がっているのか。
いくら考えても思い当たらない。
全然、そうなる理由がわからない。
少し前から寝付きがよくない。
布団に入ると「死ぬ」という文字が浮かぶ。
そればかり考えてしまい、怖くなる。
薄暗い、炭鉱のような木組みのトンネルの中
通路の両脇には松明が灯っている。
足元に何かいる。
木の人形だ。
見えるのは肩から上だけ、下は土に埋まっている。
人形の顔は穴だらけ。
元はどんな顔だったのか。
木の人形は言った。
悲しい。怖い。
いつからかなのか、わからないけど
かなり前から、悲しい。怖い。
ずっと前から泣いていた。
辛いことがあったときから。
穴が開くと同時に死んだ。
死ねば痛みは感じない。
辛いことがあると、顔に穴が開いて死ぬ。
自分の他にも、ここには同じようなのがたくさんいる。
見回したら、他にも顔に穴の開いた木の人形がたくさんいた。
どんな出来事で穴が開いたのかは
だいぶ前だったから、もう覚えてない。
泣いたのは、自分一人じゃない。
死んだ人形、みんな悲しい。
悲しいのが蓄積されて、泣いた。
願わくば、土に埋めてほしい。
そのタイミングに来た。
埋まったら、腐って消えていく。
消えて、そこは空っぽになる。
悲しいも、怖いも、空っぽになる。
空っぽになったら、だんだん悲しいのも、怖いのもなくなる。
少し時間はかかるけど、腐って消えていくから。
望み通り、木の人形を埋めた。
スコップで一体一体丁寧に、土をかけて。
いつのどんな出来事の
何が悲しかったのか
何が怖かったのかはわからないけど
木の人形たち
今日見つけるまで、怖い思いをしながら頑張っていてくれていた。
長い間待っててくれて、ありがとう。
悲しみや恐怖が消えていく日を、気長に待つね。